きのこの部屋

読後メモやお寺の中のジェンダーなどなどについて書いてます。

「虎に翼」大好きメモ

朝ドラ「虎に翼」を見始めた。

朝ドラは常に必ず観てるわけではなく、見る時期と見ない時期がある。

今回は日本初の女性裁判所長、三淵嘉子さんがモデルで、主演俳優が伊藤沙莉さんだというので、前の週から録画予約をして楽しみにしていた。

(三淵嘉子さんのことは今回初めて知ったので、これから知っていきたいと思っている。)

楽しみにしていた初日、なんと物語の始めに日本国憲法第14条が読み上げられた。

「第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

本来なら驚くようなことではないのだが、テレビなどで紹介される日本国憲法はほとんどが政治の駒のような扱いで、「国民の権利」という一番大切な部分については触れられることがなかったように思う。

有名な日本国憲法第9条だって、ただ、戦争を放棄したいと言っているのではない、国民が平和に生きる権利を守るためにあるのだし、前文では「われらは全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認する。」とも言っている。

日本国憲法では「国民」という言葉が使われているが、私はこの部分は「国民」ではなく「人々」にしたらいいのにと思っている。もはや、いや、昔から、日本に住んでいるのは日本にルーツを持つ人だけではないのだから。もちろん全ての人に基本的人権はあるのだけれど、明文化しておくのは大事なことだから。~

こんな風に、朝ドラで「権利」の視点から日本国憲法が紹介されたのが嬉しかった。

そして物語が動きだすと、主人公の寅子が「なんで女というだけで???」という疑問を見習いたいような瞬発力で口にしていく姿に、ありがとうという気持ちになった。

お見合いをしていた相手に自分の意見を言ってみたらおもしろがってもらえたからそのまま話し続けていたら、「女のくせに生意気だ」「俺に講釈たれるのか」と高圧的に言われた。寅子はひるまない。おかしなことが起きたぞっていう表情で首をかしげる

寅子の兄と寅子の親友の結婚を祝う両家のちょっとした食事会、夫たちが、この結婚は俺たちが手をつくしてまとめたんだぜとナチュラルに偉そうに振る舞う横で、妻たちはスンとしている。

それを見ていた寅子は、この結婚をまとめるために尽くしたのはお母さんたちなのに、お父さんたちの手柄みたいなこと言ってるし、お母さんたちは何も言わずに一歩下がっちゃって、スンとしてる。私、あのスンが嫌いなんだよね。と言う。

ちなみに私はあの「スン」がとても怖くて、人生の10大怖いことにランクインするかもしれないくらいなのだが、スンが怖いおかげで自分を保ってこられたとも思っているので気にいっているところでもある。

ドラマを見ながら、けっ!って思うのと同時に寅子が「はて?」(それ、おかしくない?)って言ってくれるのが心地よいし、伊藤沙莉さんのどこかコミカルな演技も心地よい。

第1週の金曜日はティッシュ片手に見た。涙が止まらなかった。

今は専業主婦をしている、かつて勉強したかったのに女学校に行かせてもらえず、実家の旅館にとってうまみとなるためのお見合いをさせられていたという、母さんの悔しかった思い、頭のいい女が確実に幸せになるためには、頭の悪い女のふりをするしかない。そして女が幸せになるには結婚するのが一番だと言う母。寅子自身は結婚に幸せを見出さないでいるが、それでも一旦「ありがとう、私のこと、心から愛してくれて。」と受け止める寅子。

このドラマの良いところは、ここに「ありがとう」と入れるところだと思う。自分の幸せは結婚することだと掲げている親友の花江ちゃんもだけど、こうして価値観の違う女性たちが認めあってるところが素晴らしい。

私は今いる場所でずっと、自分がこのドラマの「母さん」のように、作られた女性の役割をしていたらすべてが丸く収まるし、「母さん」を貫けば自分でもこの選択に納得できる日が来るかもしれないと思っていた。だから母さんの悔しさに私の悔しさを重ねた。ドラマの「母さん」は、それでもたぶん、自分のできる限りで家族をみて、その時その時の納得を重ねているように見えて、「はる」であることは1つも捨てていないところに共感した。

そのはるが、寅子に向かって女が男と肩をならべようなんて時期尚早だと言う夜学の桂場に「お黙んなさい!」「そうやって女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰?男達でしょう。自分にその責任はないと?そうやって無責任に娘の口を塞ごうとしないでちょうだい。」とまくしたて、寅子の見合い用の着物をあつらえるはずが六法全書を買いに本屋に飛び込む後半に涙が止まらなかった。金曜に語られたはるさんの悔しさ、翻って寅子の味方にならずにいられなかった姿。思い出しても涙がこみ上げてくる。

もしかしたらこのドラマはフェミニズムのような考え方に出会わずに年を重ねてきた私の母のような人や、スンとしているけれども何だかモヤモヤするぞ、という層にも何かしら響くのではないかと思う。第1週では、寅子、はる、花江、三人の女性が、それぞれの生き方が尊重して描かれていた。10年前、20年前にこのドラマに出会っていたら、私はどんな反応をしただろうと考える。

寅子のこの先に地獄という言葉を当てはめるというごまかしの無さにもスカッとした。

それから、最初に見た時には私は目が向いていなかったのだが、背景にいる女性たちにも物語が感じられると友人が教えてくれて、見返してみると本当に、背景にいる人たちが通行人としてではなく、物語の一部として確かに存在している。一人ひとりに役割があるという点で、舞台のような描き方だと思った。

来週からがとてもとても楽しみだ。久しぶりにドラマにこんなに心を動かされている。